松田博史社会保険労務士事務所

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令和4年度労働保険の年度更新の注意点

例年は、前年度の確定賃金の総額と同額を概算保険料の賃金総額の見込額として概算保険料を計算しますが、令和4年度は、雇用保険料率前期後期で異なります。そのため、労働保険の年度更新の概算保険料の計算が例年と異なるため注意が必要です。

1.前年度の賃金総額の2分の1の額に前期の料率、後期の料率をそれぞれ乗じて得た額を
  合算した額が雇用保険分の概算保険料になります。
2.賃金総額の2分の1の額に千円未満の端数が生じた場合は、前期の額を切り上げ、後期
  の額を切り捨てます。
3.前期および後期の概算保険料の額に1円未満の端数が生じた場合、この時点では切り
  捨てせず、その合算額に1円未満の端数が生じた場合に切り捨てます。

計算例
前年度の雇用保険対象分の賃金総額 54,151千円 の場合
  54,151円÷2=27,075.5千円

よって、
  前期見込額 27,076千円
  後期見込額 27,075千円

概算保険料は、
  27,076千円×1000分の9.5=257,222円
  27,075千円×1000分の13.5=365,512.5円

合算して、
  257,222円+365,512.5円=622,734.5円 → 622,734円 
                               ※雇用保険の概算保険料
 
2022年05月30日 14:45

退職勧奨を行うときの注意点(トラブルにならないようにするには)

退職勧奨とは、会社から従業員に対して自発的に会社を辞めるよう説得する行為で、従業員はそれに応じる義務はありません。ただし、従業員がその申し入れに応じれば労働契約の合意解約となります。

だからと言って、会社は退職勧奨を自由に行うことができるわけではなく、説得の回数・手段・方法が社会常識に照らして一般的でなくてはならず、決して強制的・執拗的であってはなりません。
仮に説得の限度を超えた退職勧奨を行うと、従業員に対する不法行為となり、会社は損害賠償責任を負う可能性があるため注意が必要です。

退職勧奨の方法
・退職勧奨の面談は会社側の人数は1~2名で行う。従業員の自由な意思を尊重できる
 雰囲気で行う。
・面談は3~4回までとする。1回あたりの時間は20~30分とする。
 就業時間中に行う。
・場所は会社で行う。窓がある部屋で行うと良い。


退職勧奨を行う時のポイント
■従業員が退職勧奨に応じることになった場合は、必ず退職届を提出してもらうこと。
 または、合意解約書を取り交わすこと。なぜなら、会社が退職勧奨に応じての退職と
 認識していても、従業員は解雇と認識している可能性があるため。および離職後に
 法的紛争になった場合のリスクに対する備えのため。

■退職勧奨を行う業務上の必要性があること。
 退職勧奨するに至った理由を事実に基づいて、きちんと従業員に説明できるか。

説得行為適正であること。従業員の真意に基づいた退職であること。

■従業員が録音しているケースが増えてる。
  ※隠れて録音したものも証拠として認められる。
 不安であれば、こちらから「録音しますね」と言って録音する。


退職勧奨を行うにあたり、やってはいけないこと(損害賠償が生じる可能性がある行為)
多数回にわたる面談、長時間にわたる面談を行う。
■従業員が退職勧奨に応じない旨を明確に表現した後も、執拗に退職勧奨を継続する。
大声を出す。机をたたく。人格を否定するような発言をする。嫌がらせ・暴力行為
 などの心理的圧力を加える言動や 名誉感情を不当に害する発言を行う。
■解雇に相当する理由がある場合は、「退職勧奨に応じない場合は解雇になる可能性が
 ある」と発言することは問題ないが、解雇に相当する理由がないにもかかわらず、
 そのような発言をすることは大いに問題あり。
 
2022年05月25日 11:33

企業の健康診断実施義務(安全配慮義務違反を問われないために)

労働安全衛生法には、事業者(企業)は常時使用するすべての労働者に対して、雇い入れ時
年1回、医師による健康診断を実施しなければならないと定められています。

常時使用する労働者とは
・期間の定めなく使用される労働者(正社員など)
・期間の定めがあるが、契約更新により1年以上使用されることが見込まれる労働者
 および契約更新により、すでに1年以上使用されている労働者

パートやアルバイトであっても、常時使用する労働者に該当し、週の所定労働時間が
正社員の3/4(4分の3)以上
であれば、受診させる必要があります。
なお、厚生労働省の通達では1/2(2分の1)以上であれば、受診させることが望ましいとされています。

健康診断の費用
事業者(企業)、労働者(従業員)のどちらが受診費用を負担するのか法令上の定めはありま
せんが、健康診断を実施することは企業の義務のため、当然企業が負担すべきです。

従業員が会社の指定した医師による健康診断を受診することを希望せず、他の医師による
診断結果
を提出することを希望する場合は、それでも構いません。
この場合の費用負担は従業員負担でも良いのではないでしょうか。

健康診断の受診義務
従業員には、健康診断の受診義務がありますので、これを拒否すること(他の医師による
受診も拒否)は、業務命令違反として、懲戒処分の対象にすることが可能です。

健康診断の結果
企業は、健康診断の結果を従業員本人に通知したうえで、その結果について健康診断個人
票を作成
し、5年間保存しなければなりません。

また、従業員が50人以上の場合は、労働基準監督署に健康診断の結果を提出しなければなりません。

企業は、健康診断の結果、異常所見があると診断された従業員の健康を保持するための
必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。
そして、意見を聴いたうえで必要がある場合には、就業場所の変更、職務の変更、労働時間
の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。

これを怠り、従業員が死亡するなどの事態が生じた場合は、企業は安全配慮義務違反
問われ、損害賠償が発生する可能性があります。
健康診断を実施していない場合も同様です。(さらに責任は大きい)


 
2022年05月16日 11:36

時間外労働や休日労働が翌日(長時間)まで及んだ場合の割増賃金の割増率

法律に定められている割増率
時間外労働  2割5分増
休日労働    3割5分増 
深夜労働    2割5分増

時間外労働とは、1日8時間を超えて働いた労働時間のこと
休日労働とは、労働基準法上の法定休日に休日労働した場合のこと 
深夜労働とは、22時~05時の時間帯に労働した場合のこと

法定休日とは・・・
労働基準法では、休日は週1日与えることが義務付られています。
その週1日の休日に休日労働した場合の割増率が3割5分増と定められています。

週休2日の場合(例えば土日休み)
土曜日に休日労働しても日曜日が休みであれば、割増率は2割5分増でOKです。
その逆に日曜日に休日労働しても土曜日が休みであれば、割増率は2割5分増でOKです。

3割5分増の割増賃金の支給が必要になるのは、土日両方労働した場合になります。
就業規則に法定休日をどう規定しているかによりますが、例えば、日曜日を法定休日
規定しているのであれば、土曜日は2割5分増、日曜日は3割5分増となります。

土日両方労働した場合の労働時間が短い方を法定休日にすると規定している場合は、
労働時間が短い方の日が3割5分増、長い方の日が2割5分増となります。


時間外労働や休日労働が翌日まで及んだ場合の割増率

具体例(所定労働時間9時~18時とすると)

①時間外労働(残業)が翌日の始業時刻まで及んだ場合
 18時~22時  時間外2割5分増
 22時~05時  時間外2割5分増深夜2割5分増5割増 
 05時~09時  時間外2割5分増
 09時~     翌日の通常勤務の始まり

勤務が2日に及んだ場合は、その勤務の始業時刻が属する日の労働時間になります。
上記の場合、9時~翌日の09時までが前日の勤務時間になり、09時以降が当日の勤務になります。

②時間外労働(残業)が法定休日にあたる翌日まで及んだ場合
 18時~22時  時間外2割5分増
 22時~24時  時間外2割5分増深夜2割5分増5割増
 24時~05時  休日3割5分増深夜2割5分増6割増   ※24時から休日スタート
 05時~09時  休日3割5分増

休日労働と時間外労働(残業)は共存しません。よって、休日労働が8時間を超えても割増率は3割5分増でOKです。
休日労働は時間外労働の一種であるためです。

③法定休日勤務が翌日の始業時刻まで及んだ場合
 09時~22時  休日3割5分増
 22時~24時  休日3割5分増深夜2割5分増6割増
 24時~05時  深夜2割5分増時間外2割5分増5割増  ※24時で休日終了
 05時~09時  時間外2割5分増
 09時~     翌日の通常勤務の始まり


 
2022年05月09日 14:19

令和4年4月の育児休業法改正

令和4年4月1日から育児休業法が改正されました。

1.育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務化

 下記のいずれか1つ以上を講ずること
 ・育児休業等に関する研修の実施
 ・育児休業等に関する相談体制の整備
 ・自社の育児休業取得に関する事例の提供
 ・育児休業の制度および育児休業取得促進に関する会社方針の周知

2.個別周知・取得意向確認の義務化

 労働者本人または配偶者の妊娠について労働者本人から申出があったときは、育児休業
 に関する制度について知らせるとともに、育児休業の取得意向を確認するための
 面談等の実施が義務化

 「個別周知の内容」
 ・育児休業等に関する制度
 ・育児休業等取得の申出先
 ・雇用保険の育児休業給付金に関すること
 ・育児休業期間中の社会保険料の取り扱い
 
3.有期契約労働者の取得要件の緩和

 引き続き雇用された期間が1年以上 という要件が削除


詳しい改正内容はこちら



 
2022年05月02日 13:33

令和4年4月からの在職老齢年金の見直し

令和4年4月から在職老齢年金が変わりました。
令和4年3月までは、65歳未満の人については、総報酬月額相当額と年金額の合計が28万円を超えると年金額の一部または全部が支給停止されていましたが、
令和4年4月から、65歳以上の人と同様、老齢厚生年金と総報酬月額相当額の合計47万円以下であれば、年金は支給停止されないように変更されました。

■基本月額+総報酬月額相当額=47万円以下  →  年金は全額支給

■基本月額+総報酬月額相当額=47万円超   →  年金は一部または全部支給停止
 
  ※支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

基本月額・・・加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金の月額 
        ※老齢基礎年金は支給停止の対象外(全額支給される)
総報酬月額相当額・・・その月の標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の合計÷12


例① 基本月額17万円、総報酬月額相当額36万円の場合、
   支給停止額は、(17万円+36万円-47万円)÷2=3万円 
   よって、老齢厚生年金は17万円-3万円=月額14万円支給される。


例② 基本月額16万円、総報酬月額相当額30万円の場合、
   16万円と30万円の合計は47万円以下のため、 
   老齢厚生年金は月額16万円全額支給される。
 
2022年04月25日 13:40

令和4年度雇用保険料率の変更

令和4年度から雇用保険料率が次のとおり変更されます。

令和4年4月1日~9月30日
  労働者負担 事業主負担 雇用保険料率
一般の事業 3/1000 6.5/1000 9.5/1000
建設業 4/1000 8.5/1000 12.5/1000


令和4年10月1日~
  労働者負担 事業主負担 雇用保険料率
一般の事業 5/1000 8.5/1000 13.5/1000
建設業 6/1000 10.5/1000 16.5/1000

 
2022年04月21日 08:08