松田博史社会保険労務士事務所

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休日出勤命令と有給休暇の申請

会社の所定休日に休日出勤を命じたところ、ある社員が有給休暇を申請してきました。この有給休暇の取得を認めなければならないのでしょうか?

会社が休日出勤を命じる前提として、就業規則等休日出勤についての定めがあることが必要です。また、その休日出勤日が、労働基準法上の法定休日に該当するのであれば、労働基準法第36条に基づく、いわゆる三六協定の締結と所轄労働基準監督署への届出も必要です。

 法定休日の休日出勤命令・・・・・上記の二つを満たすことで、休日出勤命令は法的に有効
 法定休日以外の休日出勤命令・・・就業規則等への定めのみで法的に有効

 ※法定休日とは、一般的には、土日休みの週の日曜日、日曜休みの週の日曜日

それでは、その日に有給休暇の休暇を申請された場合、会社はどのような対応をすればいいのでしょうか?

 有給休暇・・・従業員が休暇の取得を請求することで、労働義務がある日(出勤日)の労働義務が
        免除
され、その日は労働しなくてかまわない日になる。そして、その日の給与は支給
        
される。

 休日・・・・・会社の所定休日として、もともと労働義務が免除されていて労働する義務がない日
        
をいう。

労働義務が免除される(されている)点では、どちらも同じですが、有給休暇は、労働義務がある日の労働を免除して、労働者の休養日を増やすことが目的のため、労働義務のない休日の日に有給休暇を取得することを、労働基準法は予定していません。そして、休日出勤命令により休日労働する日は、あくまで休日のままなので、休日に有給休暇を取得することは、法的に不可能なのです。あくまで休日であるため「休日出勤」と言い、その日の労働に対して割増賃金の支払いを労働基準法は義務付けています。

よって、休日出勤を命じた日に対する有給休暇の取得申請については、認める法的義務はありません

ただし、時間外労働・休日労働に関する三六協定の締結と労働基準監督署への届出がされていない場合は、法定休日の日の休日出勤命令自体が法的に無効となるため、有給休暇の申請どうこうという問題ではなく、もともと休日のため休んでも問題なし、ということになります。


 
2025年04月09日 14:25

令和7年4月からの在職老齢年金

令和7年4月から、働きながら年金をもらう人の支給停止調整額が50万円から51万円に引き上げられました。よって、年金が支給停止になるかどうかの計算式は、次のとおりとなります。

■基本月額+総報酬月額相当額=51万円以下  →  年金は全額支給

■基本月額+総報酬月額相当額=51万円超   →  年金は一部または全部支給停止
 
  ※支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2

基本月額とは・・・・・・・加給年金を除いた老齢厚生年金の月額 
             ※老齢基礎年金は、支給停止の対象外全額支給される

総報酬月額相当額とは・・・その月の標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の合計÷12
             
を足したもの


例① 基本月額20万円、総報酬月額相当額37万円の場合、
    支給停止額は、(20万円+37万円-51万円)÷2=3万円 
    よって、老齢厚生年金は20万円-3万円=月額17万円支給される。


例② 基本月額18万円、総報酬月額相当額30万円の場合、
    18万円と30万円の合計は51万円以下のため、 
    老齢厚生年金は月額18万円全額支給される。
 
2025年04月01日 14:14

社会保険の適用拡大法案

現在、厚生年金の被保険者51人以上の事業所は、週所定労働時間20時間以上、月額賃金88,000円以上(学生は適用除外)の要件に該当するパート等を、社会保険(健康・介護保険、厚生年金保険)加入させることが義務になっていますが、この51人以上という企業規模要件段階的に撤廃していく法案が提出される予定です。

・令和 9年10月  36人以上
・令和11年10月  21人以上
・令和14年10月  11人以上
・令和17年10月  完全撤廃

また、月額88,000円以上の賃金要件は、3年以内に撤廃するとされています。


 
2025年03月14日 11:47

令和7年(2025年)度の社会保険料率

令和7年度(2025年度)から、雇用保険料率が次のとおり変更(引き下げ)されます。
 
  労働者負担 事業主負担 雇用保険料率
一般の事業 5.5/1000 9/1000 14.5/1000
建設業 6.5/1000 11/1000 17.5/1000

厚生労働省資料
001401966.pdf



令和7年3月分から、健康保険料率および介護保険料が変更されます。

〇健康保険料率
 愛知県 10.02% → 10.03%
 岐阜県  9.91% →   9.93%
 三重県  9.94% → 9.99%

〇介護保険 1.60% → 1.59%

各都道府県の健康保険料率
令和7年度保険料額表(令和7年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会


 
2025年03月03日 13:45

雇用保険の令和7年(2025年)4月からの改正事項

① 雇用保険の失業給付受給時における自己都合退職の場合の給付制限期間が、2ヶ月から
  1ヶ月に短縮されます。
   ただし、5年間に3回以上の自己都合退職の場合は、給付制限期間は3ヶ月

② 高年齢雇用継続給付金の給付率が、原則賃金の15%から10%に引き下げられます。

③ 令和7年度の雇用保険料率0.1%引き下げられます。
   一般の事業・・・労働者負担0.55%  事業主負担0.9%

④ 雇用保険に育児時短就業給付が新設されます。 
   2歳未満の子を養育のため時短勤務により賃金が減額になった場合、最大賃金の10%を支給

⑤ 育児休業給付金延長手続の厳格化
   延長手続時の必要な書類が3つになります。
   延長事由認定申告書、保育所利用申込書のコピー、入所保留(不承諾)通知書

 
2025年02月21日 15:36

令和7年4月1日施行の育児・介護休業法の主な改正点

① 子の看護休暇の見直し
 ・子の看護等休暇へ名称変更
 ・対象となる子の範囲の拡大 
   小学校就学の始期に達するまで → 小学校3年生修了まで
 ・取得事由の拡大 
   これまでの病気・ケガ、予防接種・健康診断にプラスして、感染症に伴う学級閉鎖等
   入園(入学)式、卒園式への出席の2つが追加
 ・労使協定で制度利用の適用除外とすることができた入社6ヶ月未満の労働者を撤廃
  
(入社すぐでも利用可に)

 ※ 就業規則(育児休業規程)の見直し必要、
   労使協定で入社6ヶ月未満を適用除外している場合は、労使協定の見直し・再締結必要



② 所定外労働の制限(残業免除)の範囲の拡大
 ・3歳未満の子を養育する労働者 → 小学校就学前の子を養育する労働者

 ※ 就業規則(育児休業規程)の見直し必要


③ 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
 ・労使協定で制度利用の適用除外とすることができた入社6ヶ月未満の労働者を撤廃
  
(入社すぐでも利用可に)

 ※労使協定で入社6ヶ月未満を適用除外している場合は、労使協定の見直し・再締結必要


④ 介護離職防止のための雇用環境整備を義務化
 1.介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
 2.相談体制の整備(相談窓口設置
 3.自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
 4.自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

 上記1から4のいずれかの措置を講じること複数の措置を講じることが望ましい)

 ※講じる措置の決定と準備が必要


⑤ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等を義務化
 1.介護直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する事項の周知
   取得・利用の意向の確認個別に行うこと

 周知事項
 ・介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
 ・介護休業・介護両立支援制度等の申出先
 ・介護休業給付金に関すること

 周知方法 
  面談、書面交付など
 
 2.介護に直面する前の早い段階(40歳)で情報提供を行うこと

 情報提供期間  
  労働者が40歳に達する日の属する年度中
  労働者が40歳に達する日の翌日から1年間  のいずれかの期間に
 
 情報提供事項
 ・介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
 ・介護休業・介護両立支援制度等の申出先
 ・介護休業給付金に関すること

 提供方法 
  面談、書面交付など

 ※周知・情報提供する事項に関する書面(資料)の準備、情報提供期間の決定、周知・提供方法の決定


 
2025年02月12日 15:40

年間休日を増やした場合の割増賃金単価の変更時期は

会社の年間休日年の途中で増やした場合、残業代などを計算するための割増賃金の単価はいつから変更すべきなのでしょうか。

時間外労働等に対する割増賃金の単価は、月によって定められた賃金÷1年間の月平均所定労働時間数 により求めます。

例えば、1日の所定労働時間が8時間、現在の年間休日が110日とすると、月平均所定労働時間は、

(365日-110日)×8時間÷12ヵ月=170時間

となります。そして、年間休日を10日増やして、120日にすると仮定すると、

(365日-120日)×8時間÷12ヵ月=163.3時間

となります。

そして、月給30万円の場合、これまでは、30万円÷170時間=1,764.70円 であった1時間あたりの単価が、30万円÷163.3時間=1,837.10円 に上がり、残業1時間あたりの金額は、
2,206円から2,297円に、91円上がることになります。

この91円上がった新しい単価での残業代計算は、いつから実施すべきなのでしょうか。
仮に、10月に休日を増やした場合、いつから新しい単価で残業代等を計算すればよいのでしょうか。
10月からなのでしょうか。それとも、1月まで遡って計算し直さなければならないのでしょうか。

会社の休日に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項のため、休日が変更になった場合は、休日についての就業規則の記載を変更し、従業員代表の意見書を添付して労働基準監督署へ届け出て、変更後の就業規則を従業員に周知する必要があります。

そのときに、変更後の就業規則の一番最後に記載する付則等に、

「本改正は、令和7年10月1日から適用する。」

と記載し、9月下旬までに従業員に周知すれば、休日の変更に関する就業規則の効力は、10月1日から発生することになりますので、割増賃金単価の変更10月1日から実施すればOKです。1月まで遡って変更する必要は全くありません。ご安心ください。

 
2025年01月29日 13:30

36協定(時間外・休日労働に関する協定届)に関する注意事項

36協定(正式名称:時間外・休日労働に関する協定届)とは、1日の労働時間が8時間を超える場合、または週の労働時間が40時間を超える場合に、労働基準監督署に届け出ることによって、これらの時間を超えて労働させても労働基準法違反に問われることはなくなるための届出書類です。

つまり、1日8時間、週40時間を超えて労働することがある事業所は、必ず届出が必要ということになります。超えることは絶対にない事業所については、届出の必要はありません。

この36協定では、1日、1ヶ月、1年について、それぞれ延長することができる時間数(時間外労働時間)を記載します。

1日については、特に法的上限はありませんので、何時間と記載してもOKです。徹夜勤務を想定して15時間(24時間-所定労働時間8時間-休憩1時間)と記載することも可能です。
1ヶ月については、完全週休2日制の場合は、原則最大45時間が上限になります。
1年については、完全週休2日制の場合は、原則最大360時間が上限になります。


〇36協定には、法定労働時間(8時間)を超えて時間外労働させることができる時間数を記載します。よって、所定労働時間が8時間の事業所の場合は、法定労働時間イコール所定労働時間のため分かりやすいのですが、所定労働時間が8時間より短い事業所については、少し分かりにくいかもしれません。

例えば、所定労働時間が7.5時間の場合、

ある日に8時間労働した。 → 会社としては、残業0.5時間とカウント → 36協定上(労働基準法上)は、残業ゼロ
ある日に9時間労働した。 → 会社としては、残業1.5時間とカウント → 36協定上(労働基準法上)は、残業1時間

このように、会社でいう残業時間と36協定上の残業時間が異なります
時々、この事を理解しておらず、残業時間が上限を超えてしまったと相談がありますが、所定労働時間が8時間より短い事業所の場合は、36協定上の時間に、所定労働時日数×8時間より短い時間数を足した時間数まで残業可能なので、安心してください。

例えば、1ヶ月45時間と36協定に記載、所定労度時間7.5時間、所定労働日数20日の場合、
36協定上の時間外労働上限45時間+(所定労働日数20日×(8時間-7.5時間)=55時間
までの残業時間が協定の範囲内となります。


〇45時間の時間外労働が1ヶ月あたりの上限だからといって、毎月45時間時間外労働させることはできませんので、注意してください。なぜなら、年間の時間外労働の上限は360時間だからです。
 45時間×12ヶ月=540時間>360時間
年間360時間以内に収めるには、月30時間平均でなければなりません。40時間の月があった場合、
20時間の月も必要になってきます。


36協定上(労働基準法上)の休日労働とは、会社として法定休日を決めていない場合は、例えば会社休日の土日の両方に休日出勤した場合のいずれかの日の労働時間になります。法定休日は日曜と決まっている場合は、日曜の労働時間が休日労働となります。(法定休日とは、労働基準法に基づき、会社が労働者に必ず与えなければならない休日です。少なくとも週に1日の休日を与えることが義務付けられています。法定休日以外の休日は、法定外休日といいます。)

この法定休日に、労働者に労働させる可能性がある場合は、36協定の休日労働に関する記載欄も記載する必要があります。


 
2025年01月10日 13:05

令和7年度の社会保険に関する見直し案

〇現在、厚生年金の被保険者が51人以上の企業等で働く人は、週所定労働時間20時間以上、月額賃金
 88,000円以上(学生は適用除外)の要件に該当する場合は、社会保険(健康・介護保険、厚生
 年金保険)
への加入対象になっています。

 そして、令和7年度に厚生労働省は、この51人以上という要件を撤廃し、どこで働いているかに関係
 なくすべての働く人々(個人事業所で従業員数が5人未満の事業所は除く)が、週所定労働時間
 20時間以上に該当すれば(学生は適用除外)、勤務先での社会保険への加入が義務となる法案を提出
 
することを明らかにしました。

 この法案が可決された場合、年収130万円未満のパートでも、自分自身が勤務先で社会保険に加入
 なければならなくなります。(労働時間を週20時間未満に減らせば加入は不要になります。引き続き
 夫(妻)の扶養家族として、夫(妻)の勤務先で社会保険に加入できます。)


常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所のうち、サービス業の一部や農林水産業については、社会
 保険の適用対象外となっていますが、この適用除外を撤廃し、常時5人以上の従業員を雇用している
 個人事業所は、業種に関係なくすべての事業所が社会保険の強制適用事業所となることも盛り込まれて
 います。


厚生年金の標準報酬月額等級は、現在32等級に区分されていて、上限が65万円になっていますが、
 この上限を引き上げる予定としています。引上げ案は、75万、79万、83万、98万の4案です。
 いずれにしろ、今現在65万円の等級の人は、厚生年金の保険料が上がることとなります。
 (もちろん将来もらう年金も増えますが)


 
2024年12月24日 13:50

労務関係書類の保管期間

【主な書類の保管期間】


〇 健康保険・厚生年金保険に関する書類・・・・完結の日(退職・解雇)から2年

〇 雇用保険の被保険者に関する書類・・・・・・完結の日(退職・解雇)から4年

〇 雇用保険の被保険者以外に関する書類・・・・完結の日(退職・解雇)から2年

〇 労働者名簿・・・・・・・・・・・・・・・・退職・解雇の日から3年  ※5年になる予定
 
〇 賃金台帳・・・・・・・・・・・・・・・・・最後の記入の日から3年  ※5年になる予定

〇 雇入・退職・解雇に関する書類・・・・・・・退職・解雇の日から3年  ※5年になる予定

〇 賃金その他労働関係の重要書類・・・・・・・最後の記入の日から3年  ※5年になる予定
 (タイムカード、残業申請書など)

〇 労働保険の徴収・納付に関する書類・・・・・完結の日から3年

〇 労災保険に関する書類・・・・・・・・・・・完結の日から3年

〇 健康診断個人票・・・・・・・・・・・・・・作成日から5年

〇 安全委員会・衛生委員会議事録・・・・・・・作成日から3年

〇 源泉徴収簿・・・・・・・・・・・・・・・・法定申告期限から7年

〇 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、
  配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書・・法定申告期限から7年

〇 雇用関係助成金の申請関係書類・・・・・・・支給決定日から5年

 
2024年11月27日 11:00