人的資本の情報開示(採用力強化・人材確保・定着率向上のための)

これに対し、人的資本は、人材を「知識、スキル、経験を保有し、事業活動における価値を創造するの源(みなもと)」と捉え、人材にかかる費用は、企業の成長に向けての投資と考えます。
人的資本の情報開示は、一定規模以上の企業には公表が義務付けられている項目がありますが、大企業では新たな投資を呼び込むため、企業価値向上のため、求人力の強化(優秀な人材の確保)のための目的として、それ以外の項目についても自主的に公表している企業もあります。
法令で公表が義務付けられている項目
・女性の管理職比率 301人以上
・男性の育児休業取得率 1001人以上
・男女の賃金差異 301人以上
上記のように一定規模以上の企業には、公表が義務付けられていますが、公表義務にかかわらず、人材確保に苦しんでいる中小企業ほど採用力強化のために積極的に情報開示すべきです。
就職先を探している労働者や学生は開示された情報を見て、ブラック企業でないことや働きやすい職場であるかを情報収集し、就職先選定の1つの判断要素としています。
労働者・学生の情報開示に対する要求
・情報入手の目的・・・就職先の選定
・入手したい情報項目・・・ 働き方や職場環境に関する情報(残業時間、離職率、休暇の取りやすさ、
働きやすさ、女性の活躍、育児仕事の両立支援、ワークライフバランスなど)
・入手方法・・・ 企業のホームページ閲覧、厚生労働省「しょくばらぼ」の閲覧
しょくばらぼとは、採用状況、働き方、女性活躍、能力開発等に関する情報を閲覧できるサイトで10万社以上が掲載しています。
採用力強化を目的とした情報開示の進め方
1.開示する項目と開示方法を決める。
2.人的資本に関する現在の状況説明をできるようにしておく。
そして、状況改善のための施策を講じていく。(開示するだけでは意味がない)
【開示する項目例】
・過去3年間の(新卒)採用者数、離職者数、離職率
・平均勤続年数
・平均年齢
・月平均残業時間数
・有給休暇の平均取得日数
・育児休業対象者数、取得者数、取得率(男女別)
・管理職(役職者)の女性比率
・中途採用比率
・男女の賃金差異
・正社員とパートの賃金差異
・定年後の継続雇用率
・研修制度
・新卒入社社員の3年以内離職率
・外国人の雇用者数
・年齢別モデル賃金、昇給推移
など
※1年に1回、数字を更新し、推移が分かるようにするとよいです。
会社としては、数字が公表したくないものであっても、公表の際、開示した情報の数字を改善するために会社が取り組んでいる施策を記載することで、評価・支持を受けることが出来ます。そして、実際に改善された場合は、その評価はより高いものになっていきます。(その評価は、社外だけではなく社内からも)
採用力強化、他社との差別化、企業イメージの向上、そして最終目的としての会社業績の向上を実現するために、人的資本の情報開示と開示した情報の改善を図っていくことが、これからの時代は求められていくでしょう。※開示と改善はセット
人的資本の情報開示の効果が表れるのには、時間がかかります。それでも効果がないからといって途中で止めることなく、あきらめずに続けることが非常に重要です。数年後、10年後、人材確保に苦戦し、事業活動の縮小や廃業に追い込まれていく他社を横目に求職者に選ばれる会社を目指しましょう。
また開示情報の改善のために施策を講じ改善を図っていくことは、従業員の定着率向上(離職率の低下)にも繋がっていく可能性があります。労働力人口の減少(10年後には約600万人減少)により、人材確保が非常に難しいのであれば、まずは退職していく従業員を無くす(減らす)ことが、会社が10年後、20年後に存続しているための重要なポイントになってくるでしょう。
従業員の定着率が高い企業では、「従業員を大切にする」という組織風土(社風)が、絵に描いた餅ではなく、きちんと従業員に伝わり理解されています。
従業員を大切にするとは、例えば、透明性が高い経営、ボトムアップを重視する、短期の成果だけでなく長期の成果(プロセス)も重視する、多様な価値観を認める、ワークライフバランスを重視する、などです。つまりは、社内の様々なコミュニケーションが活発であるということです。