松田博史社会保険労務士事務所

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雇用保険の令和7年(2025年)4月からの改正事項

① 雇用保険の失業給付受給時における自己都合退職の場合の給付制限期間が、2ヶ月から
  1ヶ月に短縮されます。
   ただし、5年間に3回以上の自己都合退職の場合は、給付制限期間は3ヶ月

② 高年齢雇用継続給付金の給付率が、原則賃金の15%から10%に引き下げられます。

③ 令和7年度の雇用保険料率0.1%引き下げられます。
   一般の事業・・・労働者負担0.55%  事業主負担0.9%

④ 雇用保険に育児時短就業給付が新設されます。 
   2歳未満の子を養育のため時短勤務により賃金が減額になった場合、最大賃金の10%を支給

⑤ 育児休業給付金延長手続の厳格化
   延長手続時の必要な書類が3つになります。
   延長事由認定申告書、保育所利用申込書のコピー、入所保留(不承諾)通知書

 
2025年02月21日 15:36

令和7年4月1日施行の育児・介護休業法の主な改正点

① 子の看護休暇の見直し
 ・子の看護等休暇へ名称変更
 ・対象となる子の範囲の拡大 
   小学校就学の始期に達するまで → 小学校3年生修了まで
 ・取得事由の拡大 
   これまでの病気・ケガ、予防接種・健康診断にプラスして、感染症に伴う学級閉鎖等
   入園(入学)式、卒園式への出席の2つが追加
 ・労使協定で制度利用の適用除外とすることができた入社6ヶ月未満の労働者を撤廃
  
(入社すぐでも利用可に)

 ※ 就業規則(育児休業規程)の見直し必要、
   労使協定で入社6ヶ月未満を適用除外している場合は、労使協定の見直し・再締結必要



② 所定外労働の制限(残業免除)の範囲の拡大
 ・3歳未満の子を養育する労働者 → 小学校就学前の子を養育する労働者

 ※ 就業規則(育児休業規程)の見直し必要


③ 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
 ・労使協定で制度利用の適用除外とすることができた入社6ヶ月未満の労働者を撤廃
  
(入社すぐでも利用可に)

 ※労使協定で入社6ヶ月未満を適用除外している場合は、労使協定の見直し・再締結必要


④ 介護離職防止のための雇用環境整備を義務化
 1.介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
 2.相談体制の整備(相談窓口設置
 3.自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
 4.自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

 上記1から4のいずれかの措置を講じること複数の措置を講じることが望ましい)

 ※講じる措置の決定と準備が必要


⑤ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等を義務化
 1.介護直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する事項の周知
   取得・利用の意向の確認個別に行うこと

 周知事項
 ・介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
 ・介護休業・介護両立支援制度等の申出先
 ・介護休業給付金に関すること

 周知方法 
  面談、書面交付など
 
 2.介護に直面する前の早い段階(40歳)で情報提供を行うこと

 情報提供期間  
  労働者が40歳に達する日の属する年度中
  労働者が40歳に達する日の翌日から1年間  のいずれかの期間に
 
 情報提供事項
 ・介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
 ・介護休業・介護両立支援制度等の申出先
 ・介護休業給付金に関すること

 提供方法 
  面談、書面交付など

 ※周知・情報提供する事項に関する書面(資料)の準備、情報提供期間の決定、周知・提供方法の決定


 
2025年02月12日 15:40

年間休日を増やした場合の割増賃金単価の変更時期は

会社の年間休日年の途中で増やした場合、残業代などを計算するための割増賃金の単価はいつから変更すべきなのでしょうか。

時間外労働等に対する割増賃金の単価は、月によって定められた賃金÷1年間の月平均所定労働時間数 により求めます。

例えば、1日の所定労働時間が8時間、現在の年間休日が110日とすると、月平均所定労働時間は、

(365日-110日)×8時間÷12ヵ月=170時間

となります。そして、年間休日を10日増やして、120日にすると仮定すると、

(365日-120日)×8時間÷12ヵ月=163.3時間

となります。

そして、月給30万円の場合、これまでは、30万円÷170時間=1,764.70円 であった1時間あたりの単価が、30万円÷163.3時間=1,837.10円 に上がり、残業1時間あたりの金額は、
2,206円から2,297円に、91円上がることになります。

この91円上がった新しい単価での残業代計算は、いつから実施すべきなのでしょうか。
仮に、10月に休日を増やした場合、いつから新しい単価で残業代等を計算すればよいのでしょうか。
10月からなのでしょうか。それとも、1月まで遡って計算し直さなければならないのでしょうか。

会社の休日に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項のため、休日が変更になった場合は、休日についての就業規則の記載を変更し、従業員代表の意見書を添付して労働基準監督署へ届け出て、変更後の就業規則を従業員に周知する必要があります。

そのときに、変更後の就業規則の一番最後に記載する付則等に、

「本改正は、令和7年10月1日から適用する。」

と記載し、9月下旬までに従業員に周知すれば、休日の変更に関する就業規則の効力は、10月1日から発生することになりますので、割増賃金単価の変更10月1日から実施すればOKです。1月まで遡って変更する必要は全くありません。ご安心ください。

 
2025年01月29日 13:30

36協定(時間外・休日労働に関する協定届)に関する注意事項

36協定(正式名称:時間外・休日労働に関する協定届)とは、1日の労働時間が8時間を超える場合、または週の労働時間が40時間を超える場合に、労働基準監督署に届け出ることによって、これらの時間を超えて労働させても労働基準法違反に問われることはなくなるための届出書類です。

つまり、1日8時間、週40時間を超えて労働することがある事業所は、必ず届出が必要ということになります。超えることは絶対にない事業所については、届出の必要はありません。

この36協定では、1日、1ヶ月、1年について、それぞれ延長することができる時間数(時間外労働時間)を記載します。

1日については、特に法的上限はありませんので、何時間と記載してもOKです。徹夜勤務を想定して15時間(24時間-所定労働時間8時間-休憩1時間)と記載することも可能です。
1ヶ月については、完全週休2日制の場合は、原則最大45時間が上限になります。
1年については、完全週休2日制の場合は、原則最大360時間が上限になります。


〇36協定には、法定労働時間(8時間)を超えて時間外労働させることができる時間数を記載します。よって、所定労働時間が8時間の事業所の場合は、法定労働時間イコール所定労働時間のため分かりやすいのですが、所定労働時間が8時間より短い事業所については、少し分かりにくいかもしれません。

例えば、所定労働時間が7.5時間の場合、

ある日に8時間労働した。 → 会社としては、残業0.5時間とカウント → 36協定上(労働基準法上)は、残業ゼロ
ある日に9時間労働した。 → 会社としては、残業1.5時間とカウント → 36協定上(労働基準法上)は、残業1時間

このように、会社でいう残業時間と36協定上の残業時間が異なります
時々、この事を理解しておらず、残業時間が上限を超えてしまったと相談がありますが、所定労働時間が8時間より短い事業所の場合は、36協定上の時間に、所定労働時日数×8時間より短い時間数を足した時間数まで残業可能なので、安心してください。

例えば、1ヶ月45時間と36協定に記載、所定労度時間7.5時間、所定労働日数20日の場合、
36協定上の時間外労働上限45時間+(所定労働日数20日×(8時間-7.5時間)=55時間
までの残業時間が協定の範囲内となります。


〇45時間の時間外労働が1ヶ月あたりの上限だからといって、毎月45時間時間外労働させることはできませんので、注意してください。なぜなら、年間の時間外労働の上限は360時間だからです。
 45時間×12ヶ月=540時間>360時間
年間360時間以内に収めるには、月30時間平均でなければなりません。40時間の月があった場合、
20時間の月も必要になってきます。


36協定上(労働基準法上)の休日労働とは、会社として法定休日を決めていない場合は、例えば会社休日の土日の両方に休日出勤した場合のいずれかの日の労働時間になります。法定休日は日曜と決まっている場合は、日曜の労働時間が休日労働となります。(法定休日とは、労働基準法に基づき、会社が労働者に必ず与えなければならない休日です。少なくとも週に1日の休日を与えることが義務付けられています。法定休日以外の休日は、法定外休日といいます。)

この法定休日に、労働者に労働させる可能性がある場合は、36協定の休日労働に関する記載欄も記載する必要があります。


 
2025年01月10日 13:05

令和7年度の社会保険に関する見直し案

〇現在、厚生年金の被保険者が51人以上の企業等で働く人は、週所定労働時間20時間以上、月額賃金
 88,000円以上(学生は適用除外)の要件に該当する場合は、社会保険(健康・介護保険、厚生
 年金保険)
への加入対象になっています。

 そして、令和7年度に厚生労働省は、この51人以上という要件を撤廃し、どこで働いているかに関係
 なくすべての働く人々(個人事業所で従業員数が5人未満の事業所は除く)が、週所定労働時間
 20時間以上に該当すれば(学生は適用除外)、勤務先での社会保険への加入が義務となる法案を提出
 
することを明らかにしました。

 この法案が可決された場合、年収130万円未満のパートでも、自分自身が勤務先で社会保険に加入
 なければならなくなります。(労働時間を週20時間未満に減らせば加入は不要になります。引き続き
 夫(妻)の扶養家族として、夫(妻)の勤務先で社会保険に加入できます。)


常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所のうち、サービス業の一部や農林水産業については、社会
 保険の適用対象外となっていますが、この適用除外を撤廃し、常時5人以上の従業員を雇用している
 個人事業所は、業種に関係なくすべての事業所が社会保険の強制適用事業所となることも盛り込まれて
 います。


厚生年金の標準報酬月額等級は、現在32等級に区分されていて、上限が65万円になっていますが、
 この上限を引き上げる予定としています。引上げ案は、75万、79万、83万、98万の4案です。
 いずれにしろ、今現在65万円の等級の人は、厚生年金の保険料が上がることとなります。
 (もちろん将来もらう年金も増えますが)


 
2024年12月24日 13:50

労務関係書類の保管期間

【主な書類の保管期間】


〇 健康保険・厚生年金保険に関する書類・・・・完結の日(退職・解雇)から2年

〇 雇用保険の被保険者に関する書類・・・・・・完結の日(退職・解雇)から4年

〇 雇用保険の被保険者以外に関する書類・・・・完結の日(退職・解雇)から2年

〇 労働者名簿・・・・・・・・・・・・・・・・退職・解雇の日から3年  ※5年になる予定
 
〇 賃金台帳・・・・・・・・・・・・・・・・・最後の記入の日から3年  ※5年になる予定

〇 雇入・退職・解雇に関する書類・・・・・・・退職・解雇の日から3年  ※5年になる予定

〇 賃金その他労働関係の重要書類・・・・・・・最後の記入の日から3年  ※5年になる予定
 (タイムカード、残業申請書など)

〇 労働保険の徴収・納付に関する書類・・・・・完結の日から3年

〇 労災保険に関する書類・・・・・・・・・・・完結の日から3年

〇 健康診断個人票・・・・・・・・・・・・・・作成日から5年

〇 安全委員会・衛生委員会議事録・・・・・・・作成日から3年

〇 源泉徴収簿・・・・・・・・・・・・・・・・法定申告期限から7年

〇 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、
  配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書・・法定申告期限から7年

〇 雇用関係助成金の申請関係書類・・・・・・・支給決定日から5年

 
2024年11月27日 11:00

社会保険の担当者向け、マイナ保険証への切り替えに関するお知らせ

・現在持っている健康保険証は、退職等により資格喪失しない限り、令和7年12月1日まで使用でき
 ます。

令和7年12月1日までに退職等した従業員の健康保険証は、これまで同様、資格遺失届や被扶養者
 (異動)届に添付して、日本年金機構へ返却します。

令和7年12月2日以降の退職等については、健康保険証を返却する必要はありません。自己破棄等で
 OKです。(返却することも可)

令和6年12月2日以降に入社による資格取得手続をする場合、資格取得届が日本年金機構事務センター
 に到着してから約2~5営業日で、協会けんぽにおいて登録が完了し、マイナ保険証が使用できるように
 なります。(被扶養者異動届も同様)

マイナ保険証を持っていない人の資格取得手続は、資格取得届の資格確認書発行要否欄にチェックを入れ
 て提出します。(被扶養者異動届も同様)※様式が変更されます

・資格確認書の有効期限内に退職した場合は、資格確認書は会社経由日本年金機構へ返却します。
 また、有効期限が切れた資格確認書は自己破棄でOKです。


 
2024年10月29日 16:43

令和6年10月から最低賃金が改定されました。

令和6年10月から最低賃金が改定されました。
当事務所のある東海地方、および東京・大阪は次のとおり改定されました。

愛知県  1,027円 ⇒ 1,077円
岐阜県    950円 ⇒ 1,001円
三重県    973円 ⇒ 1,023円

東京都  1,113円 ⇒ 1,163円
大阪府  1,064円 ⇒ 1,114円

その他の地域については、こちらから
地域別最低賃金の全国一覧 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)



最低賃金のチェック方法

〇時間給の場合
 時間給が最低賃金以上であること

〇日給の場合
 日給÷1日の所定労働時間 が最低賃金以上であること

〇月給の場合
 月給÷月平均所定労働時間 が最低賃金以上であること
  月平均所定労働時間=(365日-年間休日)÷12ヶ月×1日の所定労働時間


最低賃金の対象にならない賃金(上記の計算において除外される賃金)
・残業手当、休日出勤手当、深夜割増手当
・通勤手当、家族手当、精皆勤手当
・賞与
・臨時に支給される賃金(祝い金など)
 
2024年10月09日 13:14

雇用保険法が改正されます。

令和7年4月1日の改正

自己都合により退職した場合の給付制限期間が、2ヶ月 1ヶ月 に短縮されます。

出生後休業支援給付と育児時短就業給付という給付金が新設されます。

  出生後休業支援給付は、出生後の一定期間内に本人と配偶者の両方14日以上の育児休業を取得する
  場合に、支給されます。

  育児時短就業給付は、被保険者が2歳未満の子を養育するための短時間勤務をしている期間中、支払わ
  れた賃金の最大10%が支給されます。


令和10年10月1日の改正

・雇用保険の加入要件が、週20時間以上 →  週10時間以上 に変更されます。


 
2024年06月28日 14:35

仕事中の交通事故(労災保険と自賠責保険)

従業員が仕事中通勤途中交通事故に遭った場合は、労災保険治療費休業補償給付を請求することができます。また、相手の自賠責保険治療費休業損害等の賠償を請求することもできます。ただし、同一の事由で労災保険と自賠責保険の両方に請求することはできません。

つまり、治療費を労災保険と自賠責保険の両方に請求することはできませんが、治療費を労災保険に請求して、休業損害を自賠責保険に請求することは可能です。

それぞれの保険の特徴は、次のとおりです。

労災保険

療養給付として、治療費の全額が支給される。(治療費の支払いが不要)
休業給付として、仕事を休んだ4日目から給与の60%が支給される。
 また、特別支給金として給与の20%が支給され、合わせて給与の80%が支給される。

自賠責保険

・自賠責保険からの支払いは120万円までと限度額がある。
・治療費、休業損害(100%支給)だけでなく慰謝料等も支給される。
・自賠責での治療は自由診療扱いになるため、治療費は労災保険の2倍ぐらいになる。
 (保険金はすぐにはもらえないため、一旦治療費の支払いが必要になる。)
・労災保険より請求手続が簡単である。
・120万円を超える場合は、相手が任意保険に加入していれば、任意保険から支給を受けることが
 できる。ただし、事故に遭った従業員に過失がある場合は、過失相殺され金額が減額される。


では、どちらの保険に請求するのがよいのでしょうか。
実際に事故に遭った場合、まずは治療費が必要になりますが、治療費は労災、自賠責どちらを使ったほうがよいのか見ていきましょう。

具体例1

治療費   30万円(自賠責であれば60万円)
休業損失  40万円
慰謝料等  10万円

自賠責で治療しても休業損害、慰謝料等を含め110万円で120万円以内となるため、すべてを自賠責保険に請求しても損害の全額を受けることができます。
また、治療費は労災保険を使い、残りを自賠責保険に請求しても全額の補償を受けることができます。

損害総額が120万円以内で収まりそうなときは、治療費はどちらを使っても残りの損害金額の全額の補償を受けることができます。

一般的には、請求手続が簡単な自賠責保険に請求することが多いと思われます。


具体例2

治療費  60万円(自賠責であれば120万円)
休業損失 60万円
慰謝料等 20万円

自賠責で治療すると、治療費だけで120万円を使い切ってしまうため、労災保険から休業損失の80%の48万円を受け取り、休業損失の残り12万円と慰謝料等は受けとることができなくなってしまいます。つまり、損害総額のうち32万円がもらえなくなってしまいます。そこで、治療費はまず労災保険を使い、残りは自賠責保険を使えば、損害の全額を受け取ることができます。

一般的には、治療費が高額になり、損害総額が120万円を超えそうな時は、治療費は労災保険を使い金額を抑えておくことが多いと思います。


事故の相手が任意保険に加入していて、被災労働者の過失が0%であれば、損害額にかかわらずすべて相手の保険を使えばよいのですが、任意保険に加入していなかったり、加入していても被災労働者に過失がある場合は、損害額を全額(できるだけ多く)受け取れるよう、労災保険と自賠責保険をどう組み合わせて使うことがベストな選択かをよく考えて請求するとよいです。

 
2024年05月31日 14:33