松田博史社会保険労務士事務所

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2022年の記事:

中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増率が50%に引き上げられます。※2023年4月1日から

大企業ではすでに適用されたいましたが、中小企業についての適用猶予期間がいよいよ終わます。

今までは、時間外労働について、月の時間数に関係なく25%の割増率で残業代を支払えばOKでしたが、2023年4月1日からは、月60時間を超えた部分については、
50%の割増率で残業代を支払わなければなりません。

ただし、50%での支払いに代えて代替休暇を付与することでも構いません。
労使協定の締結必要

この場合、60時間を超えた時間数について、25%分は60時間以内同様に残業代を支払い、新たに増える割増率の25%部分のみを休暇に代えることができます。

労使協定に定めるべき事項
・代替休暇の時間数の算定方法
・代替休暇の単位
・代替休暇を与えることができる期間
・代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

〇代替休暇の時間数の算定方法

 代替休暇の時間数=(月の時間外労働時間数ー60時間)× 換算率(0.25)
      
      換算率=60時間超の割増率ー60時間以内の割増率(1.5-1.25)

 例:時間外労働が月80時間の場合
   (80ー60)× 0.25=5時間・・・代替休暇の時間数

〇代替休暇は、1日または半日単位で与える必要があります。

〇代替休暇は、60時間を超えた月の給与締日の翌日から2ヶ月以内に与える必要が
 あります。

〇取得日の決定方法としては、例えば、給与締日から1週間以内に本人に代替休暇を
 取得するかしないか意向を確認し、取得希望の場合は取得日を決める。

※取得するかどうかは労働者の意思に委ねられていて、取得を強制することはでき
 ない。

 

2023年3月31日までにすべき実務対応

①自社の時間外労働の状況を把握する。
②50%での支給or代替休暇、もしくは併用について検討する。
③就業規則を改定する。
④代替休暇制度を設ける場合は、労使協定を締結する。


松田博史社会保険労務士事務所では、法改正内容の説明、就業規則改定や労使協定作成のアドバイス・作成代行を承っています。
お気軽にお問い合わせください。料金は、2万円~

 
2022年12月22日 11:11

給与計算における社会保険料の控除(入社時・退職時は注意)

被保険者(従業員)が負担する社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は、被保険者資格を取得した日の属する月から喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月分まで発生し、事業主は、毎月の給与から前月分の保険料を控除します。
(健康保険法167条、厚生年金保険法84条)

つまり、例えば、10月に支給する給与から控除されている保険料は、9月分の保険料ということになります。

また、毎月の保険料は月単位で計算されるため、月の途中で被保険者資格の取得や喪失があった場合でも、保険料を日割計算することはありません。

つまり、例えば、9月1日に加入しても、9月25日に加入しても、保険料は同じ金額になります。退職時も同様ですが、退職日が月の途中の場合は、その月の保険料は発生しませんが、退職日が月末の場合は、その月分まで保険料が発生します。

具体例でみていきます。

【10日締め、25日支給の場合】

9月 1日加入 → 10月25日支給の給与から保険料控除開始
          (9月25日の給与は保険料控除なし
9月11日加入 → 10月25日支給の給与から保険料控除開始
9月21日喪失(9月20日退職)→  9月25日の給与での保険料控除が最後
                   (10月25日の給与は保険料控除なし
10月1日喪失(9月30日退職)→ 10月25日の最終給与まで保険料控除

【月末締、翌月15日支給の場合】

9月 1日加入 → 10月15日支給の給与から保険料控除開始
9月11日加入 → 10月15日支給の給与から保険料控除開始
9月21日喪失(9月20日退職)→  9月15日の給与での保険料控除が最後
                   (10月15日の給与は保険料控除なし
10月1日喪失(9月30日退職)→ 10月15日の最終給与まで保険料控除


賞与にかかる保険料は、支給の都度控除します。ただし、賞与支給月に退職する場合、月の途中での退職は、保険料を控除しなくてよいです。
退職日が月末の場合は、賞与から保険料を控除します。

 
2022年11月29日 15:25

健康保険(協会けんぽ)の被扶養者の範囲と年収要件

健康保険(協会けんぽ)の被扶養者になれる扶養家族の範囲

1.被保険者の配偶者、子、孫、父母、祖父母、曾祖父母、兄弟姉妹で、主として
  被保険者の収入によって生計を維持している人

2.被保険者のおじおば、おいめい、配偶者の父母など三親等内の親族で、被保険者と
  一緒に生活
していて、主として被保険者の収入により生計を維持している人

1.は生計維持要件だけですが、2.には生計維持要件プラス同居要件があります。
1.2.とも、日本国内に住所がある人という要件もあります。


〇生計維持の基準

・被扶養者(認定対象者)が同居している場合
 → 認定対象者の年収が130万円未満で、かつ被保険者の年収の半分未満であること

・被扶養者(認定対象者)が同居していない場合
 → 認定対象者の年収が130万円未満で、かつ被保険者からの仕送額より少ないこと

 ※60歳以上の場合は、130万円ではなく180万円未満

 年収には、給与の他、年金(老齢・障害・遺族すべて対象)、失業給付、
 傷病手当金等も含まれます。

 年収とは、過去の収入ではなく、扶養に該当する時点以降1年間の見込み収入
 
(未来に向かってのもの)になります。


○失業給付の計算

1日あたりの失業給付の額×365日 で計算した額が年収になります。

1日あたり3,612円以上の失業給付を受給していると、受給中は扶養家族にはなれません国民健康保険に加入することになります。
ただし、2ヶ月(3ヶ月)の給付制限期間中、および失業給付をすべて受給後、引き続き無職の場合は、その期間については扶養家族になることができます。


 
2022年11月18日 11:58

給与計算における欠勤控除の計算方法(長期欠勤の場合の対応方法)

給与計算における欠勤控除の計算方法には、2つの方法があります。

① 1年間を平均した1月あたりの所定労働日数を基に計算

② その月の実際の所定労働日数を基に計算

①を採用している企業が多数です。その理由としては、給与計算が楽で、欠勤控除の金額が月にかかわらず一定である、などです。

ただし、①の場合、不都合なケースも発生します。

例えば、月平均所定労働日数が20日で、実際の所定労働日数が21日の月に1日だけ出勤し、20日欠勤した場合などです。

欠勤1日につき20分の1を控除するため、20日欠勤すると20分の20控除となり、給与はゼロになってしまいます。
実際は1日出勤しているのに、ゼロはおかしいのではと思われます。

このような場合は、欠勤控除による計算方法ではなく、日割り計算(1日あたり賃金額×出勤日数)で給与を計算する方法がよいでしょう。

例えば、月10日までの欠勤は欠勤控除で計算し、月11日以上の欠勤は日割りで計算するとして使い分けると良いと思います。
10日で使い分けるのか、もっと多い日にち(15日など)にするのかは検討してください。


また、欠勤日数が多い月の通勤手当については、
給与規程などに、「月20日以上欠勤した場合は、支給しない」、「月10日欠勤した場合は、日割り計算する」などと記載していれば、減額や不支給にすることは可能です。
このような記載がなければ、全額支給する必要があります。
 
2022年11月04日 11:23

出勤停止とは(給与の支払いは必要なのか)

出勤停止(自宅待機)とは、何らかの理由により従業員の出社を会社が禁止(拒否)することです。
出勤停止には、次の2種類があります。

① 懲戒処分としての出勤停止
  従業員が就業規則に記載の違反行為を行ったときに、会社が就業規則に記載の懲戒
  処分
として、出勤停止処分とすること。
  就業規則に記載されていることが必須になります。そして、処分が正当なものであれば、
  出勤停止処分中の給与は無給で問題ありません。

② 業務命令としての出勤停止
  不正事故等の調査のために、業務命令として出勤停止(自宅待機)とすること。
  問題を起こしたと思われる従業員を出社させると、不正事故に関する証拠の隠滅の
  おそれ
があるなど、出社をさせないことに正当な理由があれば、業務命令として
  出勤停止(自宅待機)にすることは可能です。
  
  ただし、①と違い、業務命令として出社させないため、給与の支給は必要です。
  (自宅待機することが業務になるため)

  例外的に次に該当する場合は、給与は無給とすることができます。

  ・出社させないことについて、証拠隠滅や不正行為の再発などの、緊急かつ合理的な
   理由
があるとき
  ・不正行為の事実を確認し、懲戒処分として出勤停止にすることになった場合に、事実
   調査のための出勤停止期間を懲戒処分としての出勤停止期間に転化させることが、
   就業規則に定められているとき

出勤停止の期間は、法律による規制はありませんが、7日や10日と定めている会社が多いです。(長くて14日)  
 
2022年10月25日 14:45

身元保証書について(2020年の法改正により金額の明記が必要に)

身元保証書とは、第三者に従業員の身元保証人として、従業員の行為により会社が受けた損害を賠償することを誓約してもらう書面です。

身元保証書の有効期間は、期間を定めなかった場合は、原則3年なり、期間を定める場合でも5年が上限で、それより長い期間を定めても短縮されます。また、有効期間の自動更新条項無効になります。

2020年4月の民法改正により、極度額(保証人が負担すべき額の上限)明記することが義務付けれれました。記載がない身元保証書は無効になります。
300万円などと具体的に記載する必要があります。

会社は、従業員に業務上不適任や不誠実な事案があり、そのため身元保証人の責任が発生するおそれがある時、従業員の任務または任地を変更し、そのため身元保証人の責任が重くなったり、監督が困難になった時は、身元保証人に通知する義務があります。通知を受けた身元保証人は、将来に向かって身元保証契約を解除することが可能になります。


 
2022年10月11日 16:25

令和4年10月1日からの育児休業法の改正点

出生時育児休業(産後パパ育休)制度の新設
・子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得可能
2回まで分割して取得可能 (2回分まとめて申出が必要)
・休業開始の2週間前までに取得の申出 (労使協定の締結等により1か月前までとできる)
・労使協定を締結している場合は、合意した範囲内で育休中の就業が可能 
 (ただし、日数・時間等の上限あり)

1歳までの育児休業
2回まで分割して取得可能 (取得の際にそれぞれ申出)
 ※夫婦で交代して育児休業を取得可能

1歳以降の育児休業
・休業開始日を柔軟化 
 ※夫婦で交代して育児休業を取得可能


詳しくは厚生労働省のホームページ参照
育児・介護休業法について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
2022年09月29日 10:13

令和4年10月から雇用保険料率が変更になります。

令和4年10月1日から、下記のとおり雇用保険料率が変更になります。
そのため、10月1日を含む給与計算期間から、雇用保険料率を変更して給与計算を行うことになります。

例えば、

10日締めの場合 → 10月10日締め分から変更
15日締めの場合 → 10月15日締め分から変更
月末締めの場合    → 10月31日締め分から変更

 
  労働者負担 事業主負担 雇用保険料率
一般の事業 5/1000 8.5/1000 13.5/1000
建設業 6/1000 10.5/1000 16.5/1000
2022年09月21日 14:02

令和4年10月から最低賃金が改定されます。

令和4年10月から最低賃金が改定されます。
当事務所のある東海地方、および東京・大阪は次のとおり改定されます。

愛知県  955円 ⇒ 986円
岐阜県  880円 ⇒ 910円
三重県  902円 ⇒ 933円

東京都 1041円 ⇒ 1072円
大阪府  992円 ⇒ 1023円


最低賃金のチェック方法

〇時間給の場合
 時間給が最低賃金以上であること

〇日給の場合
 日給÷1日の所定労働時間 が最低賃金以上であること

〇月給の場合
 月給÷月平均所定労働時間 が最低賃金以上であること
  月平均所定労働時間=(365日-年間休日)÷12ヶ月×1日の所定労働時間


最低賃金の対象にならない賃金(上記の計算において除外される賃金)
・残業手当、休日出勤手当、深夜割増手当
・通勤手当、家族手当、精皆勤手当
・賞与
・臨時に支給される賃金(祝い金など)

 
2022年09月13日 10:32

解雇予告の注意点(トラブルにならないようにするには)

労働基準法では、従業員を解雇する際は、解雇予告を行うこととされています。
解雇予告の仕方は、3つあります。

① 解雇日の30日前までに本人に通告する。
   例えば、4月30日付で解雇する場合は、3月31日までに解雇予告をする。
        5月31日付で解雇する場合は、5月1日までに解雇予告する。

 平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払い、当日付で解雇する。
  
③ ①と②を併用する。(①+②=30日になるように)
   例えば、10日前に解雇予告し、その時に20日分の解雇予告手当を支払う。

・解雇予告手当は、解雇予告と同時に支払わなければいけません。
・解雇予告は、口頭でも構いませんが、のちに法的争いになった場合の客観的証拠となる
 ため、文書も渡しておくほうが賢明です。 
試用期間中の従業員であっても、入社から14日を超えている場合は、解雇予告
 必要です。
 試用期間中の解雇の場合は、解雇予告は必要ないと勘違いしているケースが見受けられ
 ますので注意してください。


解雇予告の除外認定
天災事変その他のやむを得ない事由により事業の継続が不可能になった場合や労働者の責めに帰すべき事由により解雇する場合は、労働基準監督署の認定を受ければ、解雇予告は不要になります。つまり、解雇予告手当を支払わず、即日解雇が可能になります。

ただし、除外認定は、書類の審査、従業員・関係者等へのヒアリング調査を行うため、申請から判断が出るまでに一定の時間を要します。そのため、実務的対応としては、上記①~③の解雇予告をすることがほとんどです。


 
2022年08月30日 14:00