雇用契約の締結により発生する権利と義務は
雇用契約(労働契約)とは、「労働者が使用者に使用されて労働を提供し、使用者が労働者に賃金を支払う。」 ことを不可欠とする契約です。つまり、労働者には労働義務、使用者には賃金支払義務が法的義務として発生します。
雇用契約を締結すると、使用者および労働者には、前記以外にも様々な権利義務が発生します。
○使用者・労働者共通
①信義誠実の原則
相手方の信頼を損なうような行動をしてはならない。
②権利濫用の戒め
権利の行使にあたっては、それを濫用してはならない。
〇労働者の義務
①誠実労働義務(職務専念義務)
労働者は、雇用契約の合意内容の枠内で、使用者の指揮命令に従って誠実に労働しな
ければならない。職務に専念しなければならない。
②職場(企業)秩序遵守義務
労働者は、職場(会社)の秩序を乱さないよう行動しなければならない。
③守秘義務・競業避止義務
労働者は、業務上知り得た使用者の営業秘密や企業秘密などをその承諾なく使用・
開示してはならない。
使用者の事業と競合する事業を行ってはならない。
〇使用者の権利義務
①業務命令権
使用者が雇用契約の締結によって取得した労働者の労働力を利用・処分する権限
②人事権
労働者の配置、異動、昇進、人事考課など労働者の地位や処遇に関する決定権限
③職場(企業)秩序定立権
組織的労働の円滑な遂行のために、組織としての規律・秩序を設定し、それを維持
する権限
④安全配慮義務
労働者が使用者の指揮命令の下に労働を提供する過程において、労働者の生命および
身体を危険から守るよう配慮すべき義務
⑤職場環境配慮義務
労働者が職場で快適に働けるよう、職場環境を整備・保持しなければならない義務(セクハラ・パワハラなどが起こらないように)
以上の権利義務は、就業規則や雇用契約書に記載がなくても、雇用契約の締結によって付随して発生する権利義務です。就業規則等に書かれてないからといって義務を免れるものではありません。
就業規則の服務規定は、労働者の義務である誠実労働義務、職場秩序遵守義務、守秘義務・競業避止義務を具体的に記載したものと言えます。服務規定はとても大事な規定なのですが、あまり関心がないように見受けられるケースがあります。就業規則の内容は法的義務になりますので、しっかり関心を持って規定を作っていってください。
従業員数9名以下だと就業規則の作成義務はありませんが、服務に関するルールを定めた「職場のルール」を作成し、従業員の義務を明確にし明示することは秩序ある職場の維持に効果的な手段であります。最近は、自分の権利ばかり主張し、義務をきちんと果たさない労働者も増えてきています。※ネット等で権利についてすぐ調べられる時代のため
2023年03月31日 10:30