配転、出向、転籍(法的に無効とならないために)
●配転・・・勤務場所や職種を相当期間にわたって変更する人事異動従業員に配転命令を命じることが可能な根拠が必要
・就業規則に配転に関する規定がある。
・過去に配転が行われている。
・勤務場所や職種を変更しないという個別合意がない。
上記を満たしていれば、従業員の個別合意はなくても配転命令を命じることができます。
個別合意がある場合は、従業員の同意が必要です。
配転命令権を有する場合でも、配転命令が権利濫用になる場合は無効になります。
・配転命令に業務上の必要性がない。
・配転命令が他の不当な動機、目的をもってなされた。
例)組合活動を理由とした配転、退職に追い込むことを目的とした配転
・従業員に対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる。
例)本人が病気で転勤により悪化の可能性がある、病気の家族の看護をしなければ
ならない
不利益を緩和する措置を実施していると、法的争いになった場合でも、配転命令が有効とされやすくなります。
●出向・・・元の会社に在籍したまま、労務提供先を別の会社に変更する人事異動で
元の会社に復帰することが予定されている
従業員に出向命令を命じることが可能な根拠が必要
※配転と同様
出向命令が権利濫用にあたらないこと
・業務上の必要性がある。
・人選が妥当である。
・労働条件が著しく悪化していない。
・生活に著しく不利益が生じない。
●転籍・・・元の会社との労働契約関係が終了し、別の会社と新たに労働契約を結ぶ
人事異動で、元の会社に復帰の予定はない
従業員に転籍命令を命じることが可能な根拠が必要
就業規則に規定があり、それに加え従業員の同意を得ることが必要
転籍命令が権利濫用にあたらないこと
実務的には、就業規則に配転・出向・転籍に関する規定があり、従業員には事前に内示するという対応が多いと思います。
内示の段階で承諾してくれた場合は良いですが、拒否された場合の対応としては、
・他の従業員にあたる。
・権利濫用に該当していなければ配転命令を正式に発令する。(ただし、転籍は除く)
のどちらかになります。
正式に発令しても拒否を続ける場合は、業務命令違反として就業規則の懲戒規定に沿って、懲戒処分することも検討することになります。
2022年07月05日 16:45